2025年薬機法改正のポイント:薬局・薬剤師に影響する4つの柱
はじめに
2025年5月14日、改正薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律の一部を改正する法律)が国会で成立し、同年11月20日以降、段階的に施行されています。
この改正は、薬局の業務から市販薬の販売形態まで、幅広い領域に影響を与える大きな制度変更です。本記事では、薬局・薬剤師に関わる主な変更点を解説します。
改正の4本柱
今回の薬機法改正は、以下の4つの柱で構成されています。
| 柱 | 内容 |
|---|---|
| ①品質・安全性の確保強化 | 製造管理・品質管理の厳格化 |
| ②安定供給体制の強化 | 医療用医薬品の供給情報報告義務化 |
| ③創薬環境の整備 | スタートアップ支援、ドラッグ・ラグ対策 |
| ④薬局機能の強化 | 調剤の外部委託、情報公開、OTC販売形態の変更 |
薬局に最も影響が大きいのは④ですが、②も医薬品供給不足への対応として重要です。
薬局に影響する主な変更点
1. 調剤業務の一部外部委託
これまで:薬局は調剤工程をすべて自局内で完結する必要がありました。
改正後:定型的な調剤業務の一部について、一定の要件を満たした外部の施設への委託が認められます。
委託できる業務の例
- 一包化(薬を1回分ずつパックにまとめる作業)
- PTPシートからの取り出し・充填
委託の要件
- 委託先は薬局開設の許可を受けた施設
- 品質管理体制の確保
- 薬剤師による最終確認は委託元の薬局で実施
薬局への影響
この改正により、特に在宅医療で多い一包化業務の負担軽減が期待されます。一方で、調剤の外部委託には品質管理や責任の所在に関する課題もあり、慎重な運用が求められます。
2. OTC医薬品の販売形態の変更
改正後の約2年後(経過措置期間あり)に施行される規定として、薬剤師や登録販売者が常駐していないコンビニなどの店舗でも市販薬(OTC医薬品)を販売できるようになります。
対象となる医薬品
- 一般用医薬品のうち、リスクが比較的低いもの
- デジタル技術を活用した情報提供を条件とする
薬剤師・薬局への影響
OTC医薬品へのアクセスが広がることで、セルフメディケーションの推進が期待されます。一方、薬局には対面でしか提供できない高い専門性(処方薬との相互作用チェック、慢性疾患の管理、在宅医療など)で差別化を図ることがより重要になります。
3. 医薬品安定供給のための情報報告義務化
医薬品供給不足に対応するため、製造販売業者に対する供給情報の報告義務が法的に明文化されました。
具体的な内容
- 限定出荷・供給停止を行う場合の厚生労働大臣への報告義務
- 電子処方箋管理サービスのデータを活用した需給分析の法的根拠整備
- 安定確保リストの対象品目拡大
これにより、供給不足の早期把握と迅速な対応が制度的に担保されます。
4. 利用者への情報公開の強化
薬局の機能や実績に関する情報公開が強化されます。
公開が求められる情報の例
- 在宅医療への対応状況
- かかりつけ薬剤師の有無
- 地域連携薬局等の認定状況
- オンライン服薬指導の対応状況
- 電子処方箋への対応状況
患者が薬局を選びやすい環境を整備する趣旨で、ファルマップ のような薬局検索ツールとの相乗効果も期待されます。
5. 濫用のおそれのある医薬品の販売規制強化
咳止め薬や風邪薬など、濫用のおそれのある医薬品(OTC医薬品含む)の販売方法が厳格化されます。
- 購入数量の制限
- 販売時の確認義務の強化
- 若年者への販売時の身分確認
品質・安全性確保の強化
製造管理の厳格化
2020年以降に相次いだジェネリック医薬品メーカーの品質不正問題を踏まえ、以下の対策が盛り込まれています。
- 製造管理者の責任の明確化
- 立入検査の権限強化
- 違反時の罰則強化
- 変更管理・逸脱管理の記録義務
薬局への影響
直接的に薬局の業務を変えるものではありませんが、ジェネリック医薬品の品質に対する信頼回復は、医薬品供給不足の根本的な解決に不可欠です。品質管理体制が強化されることで、長期的には供給の安定化が期待されます。
創薬環境の整備
ドラッグ・ラグ / ドラッグ・ロスへの対応
海外で承認された医薬品が日本で使用できないドラッグ・ラグや、そもそも日本で開発が行われないドラッグ・ロスの問題に対応するため、以下の措置が講じられています。
- 創薬スタートアップへの支援制度の整備
- 緊急時の医薬品特例承認制度の恒久化
- 国際共同治験の促進
薬局が取るべき対応
短期的な対応
- 情報公開の準備:自局の機能・実績を整理し、公開できる体制を整える
- 調剤外部委託の検討:一包化業務が多い薬局は、委託の可能性を検討
- OTC販売体制の見直し:セルフメディケーション推進に対応する品揃えと相談体制
中長期的な対応
- 専門性の強化:OTCの販売規制緩和に対して、処方薬の管理や在宅医療など、薬局ならではの専門性を高める
- DX推進:電子処方箋、オンライン服薬指導、情報公開への対応(薬局DX)
- 地域連携の強化:地域連携薬局の認定取得を視野に入れた体制づくり
まとめ
2025年薬機法改正は、薬局の在り方そのものを問い直す転機です。調剤の外部委託やOTC販売の規制緩和は、従来の「調剤中心」の薬局モデルに変化を迫るものです。
一方で、この変化は薬局が真に患者に必要とされる存在へと進化するチャンスでもあります。対人業務の充実、在宅医療への対応、地域の健康ハブとしての役割——これからの薬局が目指すべき方向は明確です。